最初の設定じゃ、今の俺たちは収まらない

シリーズ7(事業構築ログ)

でっさんは、スマホで古いメモを見つけた。
「カンジョー箱・キャラ設定」
まるたちを考え始めたころに、 書いたものだった。
「最初、お前らって、どんな設定だったっけ」
まるが、隣から画面を見る。
猫。 未来の主人公の理想の姿。 これから起きることを見越して動く。
「先のことが分かる猫にしたかったんだ」
でっさんが言った。
まるは、メガネを直した。
「今は、君の話を聞いてから考えてるね」
「うん。その方が、今の俺には合ってる」
でっさんは、新しいメモを開いた。
猫の名前は、まる。 サングラスは、メガネに変更。 服は、スーツ。
未来を知っている設定も、外した。
代わりに、こう書いた。
分からないことは、一緒に考える。


ばつの項目には、 「ダークサイドキャット」と書いてあった。
本音を隠したいときに現れる。
セリフは、 「本音なんて、見せるもんじゃない」
ばつが、顔をしかめた。
「俺、今は逆のことを言ってないか?」
でっさんは、最近のやり取りを思い出した。
ノートでも書けるのに、 なぜ通帳なのか。
売れる話だけでなく、 売れなかった話も考えてみたい。
遠慮せずに口を出すのは、 だいたい、ばつだった。
「そうだな。今は、本音を隠す方じゃない」
でっさんは、書き直した。
ばつは、黒い猫。 疑問や不満を、遠慮なく言う。 でっさんの考えにも、口を出す。
ばつは、その説明を読んだ。
「それなら分かる」
でっさんは、もう一行足そうとした。
厳しいけど、最後は励ましてくれる。
「毎回、励ますとは限らないぞ」
ばつが言った。
でっさんは、その行を消した。


かんがは、昔の設定を読んでいた。
道路標識。 過去の主人公の姿。
人の目が気になる。 間違えてはいけないと思っている。
「これは、覚えがあるな」
でっさんが言った。
物語を公開したいと思っても、 「もっと調べてから」 「全体をよく考えてから」と、 公開を先延ばしにしていた。
人と話していて、違う意見があっても、 「こんなことを言ったら、変に思われるかな」と考えて、 言わずにいた。
かんがが聞いた。
「その気持ちは、今もある?」
「ある。でも、お前には、それ以外にもやってもらってる」
でっさんは、新しいメモに書いた。
かんがは、選択肢を比べる。 気になることを確かめる。 ただし、考えすぎて動けなくなることもある。
かんがは、最後の行を指した。
「確かめずに進むと、困ることもある」
「うん。お前のおかげで気づくこともある」
ばつが、横から言った。
「その確認、どこまでやるんだ?」
かんがは、自分のメモを見た。
確認したいことが、 いつの間にか増えていた。
少し考えてから、 今日、必要な項目だけに丸をつけた。


次は、喜怒哀楽だった。
最初の設定では、 でっさんの気持ちが、顔になったものだった。
「今は、一人ずつ名前がある」
でっさんは、四つ書いた。
よろこ。 いかり。 かなし。 たのし。
「俺の気持ちを表すだけじゃなくて、それぞれ話したり、動いたりするようになった」
たのしは、昔の自分の絵を見ていた。
いかりは、眉の形を見比べている。
そこへ、ほしいが自分の絵を置いた。
「俺は?」
「このメモを書いたときは、まだいなかった」
いらなも、一覧を探した。
自分の名前は、なかった。
でっさんは、二人の項目を足した。
ほしい。 欲しいものを見つける。 やってみたいことを増やす。
いらな。 必要なものと、今は使わないものを分ける。 次に使える場所を空ける。
ほしいが、机の紙を見た。
「これも作りたい。こっちも、まだ作ってない」
いらなは、その二枚を拾った。
「じゃあ、途中のものは一緒に置いておくね」


最後に、通帳の設定を開いた。
書いた感情が、現実に反映される。
ほしいが、身を乗り出した。
「欲しいものを書いたら、手に入る?」
「最初は、そんな不思議な力も考えてた」
でっさんは、カンジョー通帳を開いた。
昔、悔しかったこと。 今、気になっていること。 これから感じてみたい気持ち。
別の選択をした場合の物語もある。
「今は、書けばその通りになるとは決めてない」
まるが聞いた。
「じゃあ、今の使い方はどう書く?」
でっさんは、ペンを持った。
少し考えて、こう書いた。
気持ちを残す。 物語を考える。 ほかの使い方も、試してみる。
「今日は、これくらいでいいな」
いらなが、古い設定をまとめた。
「これは、残す?」
「残して。最初に何を考えたか、また見たくなるかもしれない」
古い設定と、今の設定。
いらなは二つに分けて、 カンジョー箱へ入れた。


主人公の説明だけ、まだ残っていた。
落ち込んでも、すぐに立ち直る。
でっさんは、苦笑いした。
「俺、そんなに早く立ち直らないぞ」
ばつが言った。
「同じこと、何回も話してるだろ」
「うん」
でっさんは、書き直した。
気になることを話す。 絵や文章にしてみる。 違うと思ったら、直す。
作ったあとも、迷うことはある。
まるが、画面を見た。
「今の君に近くなったね」
でっさんは、新しい一覧を読み返した。
「実際に物語を作ってるうちに、最初の設定と変わってきたんだな」
ほしいが、自分の絵を差し出した。
「じゃあ、今の俺で、次の話を作ろう」
かんがは、丸をつけた項目を確認していた。
ばつは、書き直された自分の説明を読んでいる。
いらなが、机の中央を空けた。
でっさんは、スマホでChatGPTを開いた。
古い設定を見つけたこと。 今のまるたちとは、違っていたこと。 残したところと、変えたところ。
思いつくままに伝えた。
「このやり取りを、カンジョー箱の物語にして」
返ってきた物語を、 でっさんは読み始めた。
ばつが、隣からのぞく。
「俺のところ、見せて」
ほしいも、画面へ近づいた。
「俺も」
でっさんは、スマホを机の真ん中に置いた。
「今の俺たちに合ってるか、読んでみよう」
ばつが言った。
「違ってたら、言うぞ」
「うん。そのために見せてる」
みんなで、出来た物語を読んだ。
気になるところを聞いて、 でっさんは修正を伝えていく。
古い設定をそのまま使うより、 今、話しているまるたちに近づいていった。

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