カンジョー箱、開店中

「場所を借りた」
でっさんが、スマホを机に置いた。
画面には、新しいサイト。 名前は「カンジョー箱」。
「ネットの中に、物語や絵を置く場所を作ったんだ」
まるが、メガネを直して画面を見る。
「ここに、作品を並べていくんだね」
「そう。誰でも見られるようにする」
ほしいが、身を乗り出した。
「じゃあ、俺の絵を一番上に!」
ばつが横から言った。
「まだ何も置いてないのに、場所取りするな」
でっさんは、空白のページを見た。
ここに何を置くか。 どんな場所にするか。
考えるだけで、少し顔が緩んだ。


最初の物語を載せると、 画面の中に、一枚の扉が現れた。
物語につけた画像だった。
でっさんが、その画像を押す。
指が、画面を通り抜けた。
「……まる」
「見えてる」
画像の扉が開いた。
向こうには、 物語に書いた古い店があった。
机も、棚も、窓もある。
でっさんが腕を引くと、 指先に木の粉がついていた。
ばつが、画面をのぞいた。
「読む場所を作ったんじゃないのか」
「そのつもりだった」
ほしいが、扉の向こうへ顔を突っ込んだ。
「中にも入れるぞ!」
まるが、でっさんを見た。
「君の物語が、ここでは場所になるみたいだね」


全員で扉をくぐると、 店の奥に、いくつもの扉が並んでいた。
でっさんが公開した物語の数だけあった。
薬局につながる扉。 空を飛ぶ列車の駅につながる扉。
一つ開けると、薬の瓶が並ぶ棚が見えた。
別の扉を開けると、 列車の発車ベルが聞こえた。
ほしいが、駅へ走ろうとする。
かんがが、腕を広げた。
「まだ店の中を見ている途中だ」
「ちょっとだけ!」
「列車に乗ったら、ちょっとでは済まない」
でっさんは、店の真ん中に立った。
今まで作ったものが、 一つの場所でつながっている。
「ここから、全部の物語へ行けるのか」
ばつが、開いた扉を閉めた。
「先に、ここを使えるようにしろ。入口から散らかってる」


店には、まだ使っていない絵や文章も置かれていた。
途中まで書いた物語。 別の表情で描いた、まる。 題名だけ決めた紙。
いらなが、床の紙を拾う。
「これ、どこに置く?」
でっさんは、三つの棚を指した。
「公開したものは、こっち。 作っているものは、真ん中。 まだ決めてないものは、奥」
ほしいが、完成した絵を持ってきた。
「これ、大きく飾ろう」
ばつは、途中の物語を読んでいる。
「こっちは、続きがないぞ」
「まだ考えてる」
「じゃあ、完成したものと混ぜるなよ」
まるが、公開した物語を机に並べた。
でっさんは、一冊ずつ見る。
直したい文章もある。 描き直したい絵もある。
それでも、もう公開した作品だった。
「今日は、これを読めるようにしよう」
ほしいが絵を壁に掛けた。
店が、少しずつカンジョー箱らしくなっていった。


準備が済むと、 入口に小さな看板が現れた。
カンジョー箱。 物語と絵、公開中。
でっさんたちは、扉をくぐって元の部屋へ戻った。
スマホには、サイトが開いている。
載せた物語。 選んだ画像。 作品へ進むためのリンク。
画面の中の店は、 アイキャッチ画像として収まっていた。
ほしいが、でっさんの肩越しに見る。
「もっと作品が増えたら、あの店も広くなるのかな」
「増やしてみないと、分からないな」
ばつが言った。
「今度は、俺が主役の話を作れ」
「俺も!」
ほしいが続く。
いらなは、片づけきれなかった紙を持っていた。
「この途中の話も、忘れないでね」
でっさんは、次に作るもののメモを開いた。
急に、候補が増えた。


夜、でっさんはサイトを見直した。
誰かが読んだかは、まだ分からない。
でも、作品を置く場所はできた。 載せた物語も、そこにある。
まるが、隣に座った。
「次は、何を置こうか」
「言い合いながら、店を作る話」
ばつが顔を上げた。
「俺が片づけたところ、ちゃんと入れろよ」
「看板は俺が見つけた!」
ほしいも口を挟む。
でっさんは、スマホでChatGPTを開いた。
今日あったことを、 思いつくままに伝える。
「この流れを、カンジョー箱の物語にして」
返ってきた話を読む。
ばつが横からのぞいた。
「俺、こんなに優しくないぞ」
「そこは直す」
ほしいが、別のところを指した。
「俺の出番、少なくない?」
「全員の言うこと聞いたら、終わらないだろ」
でっさんは笑って、修正を伝えた。
画面の向こうの店には、 まだ空いている棚があった。

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