でっさんは、スマホで古いメモを見つけた。
「カンジョー箱・キャラ設定」
まるたちを考え始めたころに、 書いたものだった。
「最初、お前らって、どんな設定だったっけ」
まるが、隣から画面を見る。
猫。 未来の主人公の理想の姿。 これから起きることを見越して動く。
「先のことが分かる猫にしたかったんだ」
でっさんが言った。
まるは、メガネを直した。
「今は、君の話を聞いてから考えてるね」
「うん。その方が、今の俺には合ってる」
でっさんは、新しいメモを開いた。
猫の名前は、まる。 サングラスは、メガネに変更。 服は、スーツ。
未来を知っている設定も、外した。
代わりに、こう書いた。
分からないことは、一緒に考える。

ばつの項目には、 「ダークサイドキャット」と書いてあった。
本音を隠したいときに現れる。
セリフは、 「本音なんて、見せるもんじゃない」
ばつが、顔をしかめた。
「俺、今は逆のことを言ってないか?」
でっさんは、最近のやり取りを思い出した。
ノートでも書けるのに、 なぜ通帳なのか。
売れる話だけでなく、 売れなかった話も考えてみたい。
遠慮せずに口を出すのは、 だいたい、ばつだった。
「そうだな。今は、本音を隠す方じゃない」
でっさんは、書き直した。
ばつは、黒い猫。 疑問や不満を、遠慮なく言う。 でっさんの考えにも、口を出す。
ばつは、その説明を読んだ。
「それなら分かる」
でっさんは、もう一行足そうとした。
厳しいけど、最後は励ましてくれる。
「毎回、励ますとは限らないぞ」
ばつが言った。
でっさんは、その行を消した。

かんがは、昔の設定を読んでいた。
道路標識。 過去の主人公の姿。
人の目が気になる。 間違えてはいけないと思っている。
「これは、覚えがあるな」
でっさんが言った。
物語を公開したいと思っても、 「もっと調べてから」 「全体をよく考えてから」と、 公開を先延ばしにしていた。
人と話していて、違う意見があっても、 「こんなことを言ったら、変に思われるかな」と考えて、 言わずにいた。
かんがが聞いた。
「その気持ちは、今もある?」
「ある。でも、お前には、それ以外にもやってもらってる」
でっさんは、新しいメモに書いた。
かんがは、選択肢を比べる。 気になることを確かめる。 ただし、考えすぎて動けなくなることもある。
かんがは、最後の行を指した。
「確かめずに進むと、困ることもある」
「うん。お前のおかげで気づくこともある」
ばつが、横から言った。
「その確認、どこまでやるんだ?」
かんがは、自分のメモを見た。
確認したいことが、 いつの間にか増えていた。
少し考えてから、 今日、必要な項目だけに丸をつけた。

次は、喜怒哀楽だった。
最初の設定では、 でっさんの気持ちが、顔になったものだった。
「今は、一人ずつ名前がある」
でっさんは、四つ書いた。
よろこ。 いかり。 かなし。 たのし。
「俺の気持ちを表すだけじゃなくて、それぞれ話したり、動いたりするようになった」
たのしは、昔の自分の絵を見ていた。
いかりは、眉の形を見比べている。
そこへ、ほしいが自分の絵を置いた。
「俺は?」
「このメモを書いたときは、まだいなかった」
いらなも、一覧を探した。
自分の名前は、なかった。
でっさんは、二人の項目を足した。
ほしい。 欲しいものを見つける。 やってみたいことを増やす。
いらな。 必要なものと、今は使わないものを分ける。 次に使える場所を空ける。
ほしいが、机の紙を見た。
「これも作りたい。こっちも、まだ作ってない」
いらなは、その二枚を拾った。
「じゃあ、途中のものは一緒に置いておくね」

最後に、通帳の設定を開いた。
書いた感情が、現実に反映される。
ほしいが、身を乗り出した。
「欲しいものを書いたら、手に入る?」
「最初は、そんな不思議な力も考えてた」
でっさんは、カンジョー通帳を開いた。
昔、悔しかったこと。 今、気になっていること。 これから感じてみたい気持ち。
別の選択をした場合の物語もある。
「今は、書けばその通りになるとは決めてない」
まるが聞いた。
「じゃあ、今の使い方はどう書く?」
でっさんは、ペンを持った。
少し考えて、こう書いた。
気持ちを残す。 物語を考える。 ほかの使い方も、試してみる。
「今日は、これくらいでいいな」
いらなが、古い設定をまとめた。
「これは、残す?」
「残して。最初に何を考えたか、また見たくなるかもしれない」
古い設定と、今の設定。
いらなは二つに分けて、 カンジョー箱へ入れた。

主人公の説明だけ、まだ残っていた。
落ち込んでも、すぐに立ち直る。
でっさんは、苦笑いした。
「俺、そんなに早く立ち直らないぞ」
ばつが言った。
「同じこと、何回も話してるだろ」
「うん」
でっさんは、書き直した。
気になることを話す。 絵や文章にしてみる。 違うと思ったら、直す。
作ったあとも、迷うことはある。
まるが、画面を見た。
「今の君に近くなったね」
でっさんは、新しい一覧を読み返した。
「実際に物語を作ってるうちに、最初の設定と変わってきたんだな」
ほしいが、自分の絵を差し出した。
「じゃあ、今の俺で、次の話を作ろう」
かんがは、丸をつけた項目を確認していた。
ばつは、書き直された自分の説明を読んでいる。
いらなが、机の中央を空けた。
でっさんは、スマホでChatGPTを開いた。
古い設定を見つけたこと。 今のまるたちとは、違っていたこと。 残したところと、変えたところ。
思いつくままに伝えた。
「このやり取りを、カンジョー箱の物語にして」
返ってきた物語を、 でっさんは読み始めた。
ばつが、隣からのぞく。
「俺のところ、見せて」
ほしいも、画面へ近づいた。
「俺も」
でっさんは、スマホを机の真ん中に置いた。
「今の俺たちに合ってるか、読んでみよう」
ばつが言った。
「違ってたら、言うぞ」
「うん。そのために見せてる」
みんなで、出来た物語を読んだ。
気になるところを聞いて、 でっさんは修正を伝えていく。
古い設定をそのまま使うより、 今、話しているまるたちに近づいていった。




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