このシリーズで、一番書きたかったのは、
「速く進めない事」ではなく、
“戻れなくなる事”の怖さでした。
前へ進みたい気持ちは、本物です。
人生を変えたい。
認められたい。
置いていかれたくない。
収益も欲しい。
ちゃんと結果も出したい。
その気持ち自体は、
間違いじゃないと思っています。
実際、
高速で進める人もいます。
加速の中で救われる人もいます。
高速都市だから見える景色も、確かにある。
だから、この物語では、
「高速=悪」にはしたくありませんでした。
でも。
でっさんは、
その速度へ長く居続けると、
少しずつ呼吸が浅くなっていきました。
声が小さくなって。
止まれなくなって。
“生きる”より、“維持する”ために動き始めて。
気づいた時には、
戻る場所が見えなくなっていた。
だから、この物語で本当に描きたかったのは、
「どれだけ速く進めるか」
ではなく、
「壊れても、戻って来られるか」
でした。
途中で止まってもいい。
崩れてもいい。
未完成でもいい。
でも。
完全に自分を失う速度だけは、
出来れば選ばないでほしい。
小さくても。
地味でも。
遠回りでも。
ちゃんと呼吸が出来る事。
ちゃんと声が届く事。
また戻って来られる事。
それを残したまま進めるなら、
人は何度でも、また歩けるんじゃないかと思っています。
この物語は、
“速く進めない人の慰め”を書きたかった訳ではありません。
むしろ。
「進みたい」気持ちを捨てきれない人間が、
それでも自分を壊し切らない速度を探している話です。
だから最後まで、
高速都市の光は消えていません。
あの光に、今でも少し憧れています。
でも。
今は、
小さくても長く残る光を、
ちゃんと見失わずに進みたいと思っています。
シリーズ5|カンジョー未来都市|戻って来られる速度|あとがき
カンジョー通帳

コメント