シリーズ5|世界拡張局―「自分には関係ない」を見つける物語 ―|第3話|選択肢資料館

カンジョー通帳

この記事の要約

  • 選択肢資料館で、一冊の記録本が行方不明になる出来事が起きた。
  • でっさんは空になった棚から隠し収納を見つけ、本を発見した。
  • その本は多くの人には途中から白紙になるが、でっさんだけは最後まで読むことができた。
  • 本には、「自分には関係ない」と思っていた世界へ踏み出した人の記録が残されていた。
  • 関係者とは最初から決まっている存在ではないという考えが、でっさんの中に残った。

🧭 判断ログ

判断:興味がないと思っていた世界へ一歩踏み入れることを受け入れた
場面:選択肢資料館で最後まで読める記録本を見つけた場面
やり方:隠し収納を見つけ、本を最後まで読み、内容と過去に見た扉を結び付けた
変化:関係者とは最初から決まっているものではなく、自分で踏み入れた先に続いていくものとして受け止めた


物語

朝、世界拡張局の廊下はいつもより慌ただしかった。

会議室へ向かっていたでっさんは、地下へ急ぐ局員たちの流れに加わった。

誰かが「資料館で問題が起きたらしい」とだけ口にしていた。

地下にある選択肢資料館では、管理人と局員たちが一つの棚を囲んでいた。

天井まで続く本棚の一角だけが空いている。

管理人は、その棚に収まっていた一冊の記録本がなくなったと説明した。

資料館では本の持ち出しは禁止され、返却もすべて記録されている。

なくなること自体が起きない場所だった。

局員たちは館内を探し始めた。

閲覧席、返却台、保管室、机の下、脚立の裏まで確認したが見つからない。

時間だけが過ぎ、夕方になるころには資料館全体に疲れた空気が流れていた。

でっさんは探し回ることをやめ、空いた棚の前に立ったままだった。

本がなくなったことより、その場所だけが空いていることが気になっていた。

棚へ近づき、木の縁を指先でなぞる。

わずかな段差に気付き、浮いていた板を押すと、小さな音とともに開いた。

棚の奥には隠し収納があり、その中に一冊だけ本が置かれていた。

管理人も局員たちも、その収納の存在を知らなかった。

でっさんが本を取り出す。

表紙には『自分には関係ないと思っていた世界』とだけ書かれていた。

管理人が最初に開いたが、途中から文字が消え、白紙になった。

別の局員も同じだった。

何人が読んでも数ページ先から先は白紙になる。

最後に本はでっさんへ渡された。

ページをめくるたびに文字は続き、最後まで途切れなかった。

本には、海外にも創作にも挑戦にも興味がないまま暮らしていた人の記録が書かれていた。

ある日、小さなきっかけで一歩だけ足を踏み入れる。

劇的な変化は起きず、失敗もあり、元へ戻る日もある。

それでも、その日から記録だけは少しずつ変わっていった。

読み終えたでっさんへ、管理人は何も説明しなかった。

本を受け取り、隠し収納へ戻そうとしたが板は動かず、本も収まらなかった。

正面の棚へ戻すと、本は何事もなかったようにぴたりと収まった。

管理人はその様子を見届けてから静かにつぶやいた。

「最初から関係者だった人はいない。」

その言葉だけが資料館に残った。

資料館を出たあと、でっさんは地下の廊下で足を止めた。

頭に浮かんだのは、先日見つけた「関係者以外立入禁止」と書かれた古い扉だった。

あの表示は、人を追い返すためだけにあったわけではないのかもしれない。

そう考えたまま、でっさんは再び歩き始めた。

※この文章は、あくまで私の主観による文章です。


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