この記事の要約
- かなしは飛び台への恐怖が本当なのか、自分で確かめることにした。
- 誰もいない早朝、一人で飛び台の先端まで登った。
- 高さを目の前にすると、飛ぶより先に「落ちる」という感覚が強く残った。
- 飛ばずに降りたあと、まると静かな時間を過ごした。
- 飛べない理由は想像ではなく、自分で確かめた体験になった。
🧭 判断ログ
判断:飛び台の先端まで登ったが、その日は飛ばずに降りることを選んだ。
場面:早朝、一人で飛び台へ登り、高さを確かめた場面。
やり方:誰もいない時間に飛び台へ登り、自分の目で高さを確かめたあと、飛ばずにベンチへ座った。
変化:飛べない理由が想像ではなく、「高い」という体験として自分の中にはっきり残った。
物語
前の日から、かなしは眠れなかった。
広場では「大丈夫」という言葉ばかりが増えていた。
笑顔も増えていた。
それなのに、自分だけが飛び台を見るたび足が止まる。
怖い。
その言葉を飲み込むたび、本当に怖いのか、それとも思い込みなのか分からなくなっていた。
だから、自分で確かめることにした。
まだ誰もいない朝。
かなしは一人で飛び台へ向かった。
飛び台の下には誰もいなかった。
風だけが高いところを通り抜けている。
かなしは階段へ手をかけた。
ゆっくり登り始める。
最初は何も感じなかった。
街が少しずつ遠くなる。
広場が小さく見える。
上へ行くほど風は強くなり、手すりを握る指へ力が入っていく。
飛び台の先端が近づく。
空が近い。
街は足元に広がっていた。
先端まで歩く。
風が足元を抜ける。
つま先を少しだけ前へ出した。
その瞬間だった。
体の奥が冷たくなる。
思っていたより高い。
もし今、手を離したら。
飛ぶより先に、
落ちる。
その感覚だけが、はっきり浮かんだ。
未来は見えない。
成功も見えない。
見えたのは高さだけだった。
飛びたい気持ちは残っている。
それでも体は動かなかった。
長い時間、風だけが吹いていた。
やがて、かなしは静かに向きを変えた。
何も決められないまま、階段を降り始める。
飛び台を降りると、そのまま歩いた。
途中にある古いベンチで足を止める。
腰を下ろす。
木の板が小さく軋んだ。
飛び台は、さっきより高く見えた。
しばらくすると、誰かが隣へ座った。
まるだった。
何も言わない。
飛べたかも聞かない。
励ましもしない。
二人とも飛び台を見なかった。
風が吹く。
木の葉が一枚、ベンチの前へ落ちる。
誰も拾わない。
そのまま風に揺れていた。
少し離れた場所で、でっさんが二人を見ていた。
声はかけなかった。
飛びたい気持ちはある。
でも飛べる気持ちには届いていない。
そのことだけは、
飛び台ではなく、
ベンチに座る後ろ姿から伝わってきた。
街は少しずつ目を覚ます。
人の声が聞こえ始める。
飛び台は今日も高いままだった。
※この文章は、あくまで私の主観による文章です。
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