久しぶりに、でっさんはカンジョー箱を開いた。
箱の中には、物語や登場人物、作りたかったものが、たくさん入っていた。
どれも一生懸命に考えたものだった。
それなのに、今見ると分からなくなった。
「作っているときは頑張ってた。でも、これは何なんだろう」
ばつが言った。
「いろいろ入れすぎたんだよ。物語なのか、商品なのか、人生の記録なのか、分からなくなってる」
「でも、無駄だったわけじゃないよ」
まるが言った。
「でっさんは、自分が考えたことや感じたことを、消したくなかったんだと思う」
そのとき、ほしいが箱の奥から飛び出してきた。
「外へ出て、いろいろなものを見たい」
「心が動いたことを持ち帰って、言葉や物語にしたい」
いらなも言った。
「完成した世界はいらない」
「毎日更新しなければならない、という決まりもいらない」
かんがは、箱の中にある言葉を並べた。
体験する。
心が動く。
箱に残す。
物語にする。
外へ出す。
「カンジョー箱は、この繰り返しをする場所なんじゃないかな」
でっさんは、並んだ言葉を見つめた。
新しく立派な文章を書かなくてもいい。
誰かと話したこと。
迷ったこと。
嫌だったこと。
欲しいと思った未来。
それを持ち帰って、まるやばつたちの物語にすればいい。
ばつが言った。
「また考えるだけで終わるかもしれないぞ」
「そうならないように、一度に一つだけ作る」
でっさんは答えた。
「でも、急がない」
ほしいが心配そうに聞いた。
「やめるの?」
「やめない」
カンジョー箱を成功させるために生きるのではない。
自分が実際に生きて、見て、感じたものを、カンジョー箱へ持ち帰る。
箱に入れるための人生ではなく、
生きたものを入れる箱にする。
「カンジョー箱のことを考えていると、楽しい」
でっさんは、その言葉を箱に入れた。
それが何になるのかは、まだ分からない。
分からないから、続きを作ることができる。
急がない。
でも、続ける。


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