行き先を、予定に変える

シリーズ4(ファンタジー)

でっさんは、映画を止めた。

画面の中には、去年とよく似たメモを開く自分がいた。

自分の仕事を作る。 海外で暮らす。 新しいことに挑戦する。

願いは、まだそこにあった。 けれど、試した結果を書き足す場所は、空いていた。

でっさんは、しばらく画面を見ていた。

「俺、今、この続きにいるんだな」

考える。 調べる。 もっと良い方法を探す。

本当にこれでいいのかと迷い、また考える。

画面の中の自分が、次に何をするのか分かる気がした。 それくらい、繰り返してきた動きだった。

でっさんは、自分の机を見た。

書きかけのものがある。 試してみたかった案がある。 すでに公開した物語もある。

ここまで、何もしてこなかったわけではない。

ただ、自分の仕事を作るために、次は何をするのか。 それが、今日の予定には入っていなかった。

「やりたいこと」には、何度も書いた。

その下に、別の願いを足すこともあった。

けれど、いつ、どこまでやるのかは、その日の自分に任せていた。

疲れて帰ってきた自分。 迷い始めた自分。 新しい案に気を取られた自分。

毎回、その自分が、最初から決め直していた。

でっさんは、行きたい未来をもう一度見た。

知らない街の朝。 自分で作った仕事を開く。

届いた注文を確かめ、新しいものを試す。 育った仕事の一部を任せ、次の事業を作る。

昼には身体を動かす。 夕方には、まだ入ったことのない店へ行く。

大切な人たちと笑いながら、最近あったことを話す。

「それでさ、次はこれをやってみたいんだよ」

未来の自分は、楽しそうだった。

でっさんも、少し笑った。

この暮らしを、自分の毎日にしたかった。

カレンダーを開いた。

空いている時間を一つ選ぶ。

まず、15分。

予定の名前に、〈起業する〉と打ちかけて、止めた。

その時間になった自分が、何をすればいいのか分からない。

でっさんは、文字を消した。

〈商品にする経験を一つ選び、誰に何を届けるか、3行で書く〉

これなら、始めるところが見えた。

次の日にも、時間を取った。

〈選んだ経験から、見本を一つ作る〉

その先に、もう一つ。

〈見本を外へ出して、反応を確かめる〉

画面に、予定が並んだ。

さっきまで頭の中にあった未来が、少しだけ、今日から続く形になった。

それでも、気になることは出てきた。

この題材でいいのだろうか。 ほかのもののほうが、売れるのではないか。

でっさんは、また案を広げそうになった。

手を止めて、予定を読む。

今日は、一つ選んで、3行にするところまで。

一生これだけをやると決める日ではない。 まず、見本を作って確かめるために選ぶ。

そう思うと、候補を一つ開けた。

書き始めると、言葉がうまく出てこなかった。

短く書く。 読み返す。 一か所直す。

3行になった。

でっさんは、その下に、明日作る部分を一つ書いた。

カレンダーへ戻り、今日の予定に完了の印をつけた。

商品は、まだできていない。 売上も、まだない。

けれど、明日の自分が何を開けばいいのかは、もう決まっていた。

でっさんは、止めていた映画を思い出した。

また新しいページを作り、同じ願いを書く自分。

今日は、その場面から少し先へ進んだ。

自分で時間を選び、やることを決め、手を動かした。 明日、その続きをする場所も用意した。

でっさんは、メモを閉じた。

未来の自分が、いつかこの予定を見返すかもしれない。

「あの日、ここから始めたんだな」

その声を想像すると、少しニヤニヤした。

明日の予定には、もう、自分がやりたかったことが入っていた。

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