シリーズ7|波のある街|あとがき

カンジョー通帳

この街には、最後まで完成した建物はほとんどありませんでした。

工事が進む日もあれば、何もできない日もありました。

記録ばかり整えた日。

未来ばかり眺めた日。

完璧な設計を考え続けた日。

休むと決めた日。

自分が作っているのか、それとも道具に作られているのか分からなくなった日。

街の名前を見ることさえ苦しくなった日。

そして、気づけば何週間も門を閉じたままだった日。

この物語で描きたかったのは、「毎日続けることの大切さ」ではありません。

毎日続けられない日があること。

止まる日があること。

距離を置く日があること。

それでも、それまで積み上げてきたものは消えないということです。

物語の中で描かれた発電所は、街を支えるための土台でした。

目立たないけれど、長く工事を続けるために必要な力です。

現実で言えば、体力や健康、生活を整えることのようなものかもしれません。

設計局は、とても優秀な道具でした。

便利だからこそ、「これは誰が作っているんだろう」という問いが生まれます。

その答えを、この物語は出していません。

きっと、人それぞれ違う答えがあるからです。

未来都市の巨大模型は、まだ手に入っていない未来でした。

事業でも、夢でも、理想でも構いません。

未来を見ることには意味があります。

でも、未来を見ることと、今日レンガを一つ積むことは、同じではありません。

だからこの街は、完成しませんでした。

完成させることよりも、残し続けることを選んだからです。

門が閉まる日があってもいい。

工事が止まる日があってもいい。

また開けられるように、その街が残っていることの方が大切です。

入口に立っている札には、「完成」とは書かれていません。

「再開」とも書かれていません。

ただ、一言だけ。

工事中。

この街は、完成した街ではなく、いつでも工事中の街です。

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