実家を出てから、毎月の生活費を自分で支払うようになった。
大きな資金を使わないこと。
在庫を抱えないこと。
維持費を抑えながら続けられること。
そんなことを考えながら、新しい方法を探していた。
もう一度、何かを作りたい気持ちも残っていた。

約一年半前、私はChatGPTを使い始めた。
自分が考えていることを入力すると、いくつもの案が返ってきた。
使いたいと思うものもあれば、自分には合わないものもあった。
私は、その中から必要なものを選んだ。
文章を書き直す。
別々の案を組み合わせる。
違うと感じたものは使わない。
考えがまとまると、画像を作り、Webページへ置いてみた。
少しずつ、パソコンの中に新しいものが増えていった。

けれど、作っているものは一つにまとまっていなかった。
楽しいこと。
怖かったこと。
怒ったこと。
悲しかったこと。
決められずに迷っていること。
私は、いろいろな感情を、なかったことにせず箱へ入れてみることにした。
楽しい気持ちだけではない。
恐れも、怒りも、悲しみも、迷いも入れた。
それを「全感情資産化計画」と名づけた。

もっとも、作ったもののすべてが、感情だけを扱っていたわけではない。
考えたことや、これまでの経験。
失敗したことや、まだ形になっていない願いも混ざっていた。
それでも、全部を入れておける大きな箱を、先に作ることにした。
名前は「カンジョー箱」。

箱を作ったあと、私は昔描いた猫のデータを開いた。
スケッチブックから、父のパソコンへ移した猫。
自分のパソコンを買ってからも、ずっと残していた猫だった。
私はその猫を、新しいキャラクターとして描き直そうとした。
名前は「まる」。
自分の理想を表す存在にしようと思った。

けれど、どんな姿にすればいいのか決まらなかった。
線を変える。
色を変える。
描き直しては、また戻す。
画面の中の猫は、どの姿にも決まりきらないまま、こちらを見ていた。
「お前の理想は、もう決まってるのか?」
私は答えられなかった。
まるは、未完成のまま残った。




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