根を張る時間

シリーズ1(内面)

でっさんは、鉢植えに水をやっていた。
土の色が、ゆっくり濃くなる。
昨日と比べて、何か変わっただろうか。
葉を見ても、よく分からない。 けれど、少し前に撮った写真には、まだなかった葉が一枚あった。
「いつの間に、出てたんだろう」
でっさんは、水差しを置いた。


カンジョー箱の制作は、続けていた。
気になったことを書く。 言葉にならなかった気持ちを、物語にする。 画像を作り、公開する。
作ったものは、少しずつ増えていた。
それでも、ときどき焦った。
自分の仕事を持ちたい。 今の暮らしを変えていきたい。
これでいいのだろうか。 もっと役に立つものを作らなければいけないのではないか。
考えているうちに、さっきまで書きたかったことまで、頼りなく見えてきた。


でっさんは、書きかけの文章を眺めた。
制作は、これからも続けたかった。
書いてみたいことがある。 形にしたい世界もある。
ただ、何かを作るたびに、仕事になるかどうかまで答えを出そうとしていた。
「一つ書くのに、ずいぶん背負わせてるな」
でっさんは、少し笑った。
今日は、今思ったことを一つ残す。 短くても、途中の考えでもいい。
そこから何が育つのかは、作りながら見ていきたかった。


肩を下げ、息を吐いた。
今朝、鉢植えを見て思ったことを書いてみる。
毎日見ていると、変化は分からない。 でも、写真にはなかった葉が出ていた。
そこまで書くと、自分の制作のことも浮かんできた。
以前なら、言葉にする前に流れていた気持ち。 今は、それを一つの文章にできることがある。
でっさんは、その続きを書いた。
うまくまとめようとすると、手が止まった。 いったん、普段の言い方に戻した。
すると、もう一文、出てきた。


今日は、短い文章になった。
読み返して、気になった言葉を一つ直す。
もっと足せそうなこともあった。 けれど、今書きたかったことは、ここにあった。
でっさんは、そのまま公開した。
画面を開くと、さっきまで自分の中にあったことが載っていた。
反応は、まだなかった。
でっさんは、文章をもう一度読んだ。
「今日は、これを書いたんだな」
それで、画面を閉じた。


窓辺では、小さな葉が光を受けていた。
いつ大きくなるのか、今ここで決めることはできない。 今日できるのは、様子を見て、必要な手をかけることだった。
カンジョー箱も、作り続けていく。 思いついたことを、少しずつ外へ出す。
仕事につなげる方法は、それを試す時間に、また考えればよかった。
「人事を尽くして、天命を待つ、か」
でっさんは、水差しを片づけた。
窓を開けると、風が入ってきた。
今日は、一つ残せた。
立ち上がり、大きく伸びをする。
ご飯を食べたら、少し外を歩こう。 その途中で、また何か書きたくなるかもしれない。
でっさんは、メモを取れるように、スマートフォンをポケットに入れた。

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