シリーズ5|世界拡張局―「自分には関係ない」を見つける物語 ―|第5話|物語先行地区

カンジョー通帳

この記事の要約

  • たのしとほしいが物語先行地区の調査許可を受けた。
  • 地区には始まる前の出来事を記録した本が並んでいた。
  • 二人はでっさんの名前が書かれた本を発見した。
  • 物語は途中まで記録されていたが、その先は白紙だった。
  • 未来は未定のまま記録される場所である可能性が見えてきた。

🧭 判断ログ

判断:物語先行地区の本を開いて内容を確認する
場面:たのしとほしいが物語先行地区の書棚を調査した場面
やり方:『初めて海外へ行く物語』を取り出し、でっさんの記録を最後まで読んだ
変化:物語が途中で止まり、未来の部分が白紙のまま残されていることが判明した


物語

物語先行地区への立入許可が下りたのは、扉が発見されてから数日後だった。

正式な調査隊ではなかった。

でっさんは参加していない。

今回許可されたのは、たのしとほしいによる簡易確認だけだった。

二人は局内の扉を通り、物語先行地区へ入った。

長い通路を抜ける。

その先には巨大な部屋が広がっていた。

天井まで届く本棚が並んでいる。

棚の数は見渡せないほど多い。

本だけが整然と並べられていた。

たのしは近くの棚へ向かった。

背表紙を見て足を止める。

そこには見慣れない題名が並んでいた。

初めて創作を始めた物語。

初めて挑戦した物語。

初めて旅へ出た物語。

初めて海外へ行く物語。

どれも結果ではなく、始まる前の出来事のような題名だった。

たのしは一冊を引き抜いた。

何となく気になったからだった。

表紙を見る。

そこで動きが止まった。

小さく名前が書かれていた。

でっさん。

最近、世界拡張局で何度も話題になっている人物だった。

選択肢資料館で見つかった記録。

関係ないと思っていた世界の持ち主。

たのしとほしいは顔を見合わせた。

本を開く。

最初のページには何気ない日常が続いていた。

休日。

仕事。

動画。

気になった記事。

閉じる。

翌日また見る。

閉じる。

海外旅行の記事を見る。

閉じる。

英語学習の記事を見る。

閉じる。

航空券の検索画面を見る。

閉じる。

記録は進んでいるようで進んでいなかった。

気になっている。

しかし動いていない。

そんな状態が何ページも続いていた。

たのしは読み進めた。

劇的な展開はない。

決意表明もない。

特別な出来事もない。

ただ気になっているだけだった。

妙に現実的だった。

やがて途中で手が止まる。

次のページが白紙だった。

さらにめくる。

白紙。

その次も白紙。

最後まで白紙だった。

たのしは本を閉じて確認した。

落丁ではない。

破れているわけでもない。

最初から何も書かれていない。

途中で終わっている。

だが完結もしていない。

最後のページにも終わりを示す記載は無かった。

まるで途中で記録が止まったようだった。

たのしは本を持ったまま周囲を見渡した。

棚。

通路。

天井。

誰もいない。

静かな部屋だった。

続きが無い。

そう呟いた。

ほしいは白紙のページを見ていた。

しばらくしてから口を開く。

まだ決まってないんだろ。

たのしは白紙を見る。

確かにそう見えた。

海外へ行くのか。

行かないのか。

挑戦するのか。

やめるのか。

その先が決まっていない。

だから記録も存在していない。

たのしは周囲の棚を見た。

他の本も同じなのかもしれない。

完成した物語ではない。

途中の物語。

まだ選ばれていない未来の記録。

世界拡張局が追っているのは未調査区域だけではないのかもしれなかった。

たのしは本を棚へ戻した。

表紙には変わらず題名が残っている。

『初めて海外へ行く物語』

その下に、でっさんの名前。

本人はこの本の存在を知らない。

それでも記録はここにある。

たのしは少し笑った。

ほしいは最後の白紙ページを見続けていた。

何も書かれていない。

それなのに空欄には見えなかった。

次の記録が入る場所だけが静かに残されていた。

※この文章は、あくまで私の主観による文章です。


記録と設計を見る

シリーズ5カンジョー未来都市

主役キャラ:たのし

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