でっさんは、映画を止めた。
画面の中には、去年とよく似たメモを開く自分がいた。
自分の仕事を作る。 海外で暮らす。 新しいことに挑戦する。
願いは、まだそこにあった。 けれど、試した結果を書き足す場所は、空いていた。
でっさんは、しばらく画面を見ていた。
「俺、今、この続きにいるんだな」
考える。 調べる。 もっと良い方法を探す。
本当にこれでいいのかと迷い、また考える。
画面の中の自分が、次に何をするのか分かる気がした。 それくらい、繰り返してきた動きだった。

でっさんは、自分の机を見た。
書きかけのものがある。 試してみたかった案がある。 すでに公開した物語もある。
ここまで、何もしてこなかったわけではない。
ただ、自分の仕事を作るために、次は何をするのか。 それが、今日の予定には入っていなかった。
「やりたいこと」には、何度も書いた。
その下に、別の願いを足すこともあった。
けれど、いつ、どこまでやるのかは、その日の自分に任せていた。
疲れて帰ってきた自分。 迷い始めた自分。 新しい案に気を取られた自分。
毎回、その自分が、最初から決め直していた。

でっさんは、行きたい未来をもう一度見た。
知らない街の朝。 自分で作った仕事を開く。
届いた注文を確かめ、新しいものを試す。 育った仕事の一部を任せ、次の事業を作る。
昼には身体を動かす。 夕方には、まだ入ったことのない店へ行く。
大切な人たちと笑いながら、最近あったことを話す。
「それでさ、次はこれをやってみたいんだよ」
未来の自分は、楽しそうだった。
でっさんも、少し笑った。
この暮らしを、自分の毎日にしたかった。

カレンダーを開いた。
空いている時間を一つ選ぶ。
まず、15分。
予定の名前に、〈起業する〉と打ちかけて、止めた。
その時間になった自分が、何をすればいいのか分からない。
でっさんは、文字を消した。
〈商品にする経験を一つ選び、誰に何を届けるか、3行で書く〉
これなら、始めるところが見えた。
次の日にも、時間を取った。
〈選んだ経験から、見本を一つ作る〉
その先に、もう一つ。
〈見本を外へ出して、反応を確かめる〉
画面に、予定が並んだ。
さっきまで頭の中にあった未来が、少しだけ、今日から続く形になった。

それでも、気になることは出てきた。
この題材でいいのだろうか。 ほかのもののほうが、売れるのではないか。
でっさんは、また案を広げそうになった。
手を止めて、予定を読む。
今日は、一つ選んで、3行にするところまで。
一生これだけをやると決める日ではない。 まず、見本を作って確かめるために選ぶ。
そう思うと、候補を一つ開けた。
書き始めると、言葉がうまく出てこなかった。
短く書く。 読み返す。 一か所直す。
3行になった。
でっさんは、その下に、明日作る部分を一つ書いた。

カレンダーへ戻り、今日の予定に完了の印をつけた。
商品は、まだできていない。 売上も、まだない。
けれど、明日の自分が何を開けばいいのかは、もう決まっていた。
でっさんは、止めていた映画を思い出した。
また新しいページを作り、同じ願いを書く自分。
今日は、その場面から少し先へ進んだ。
自分で時間を選び、やることを決め、手を動かした。 明日、その続きをする場所も用意した。
でっさんは、メモを閉じた。
未来の自分が、いつかこの予定を見返すかもしれない。
「あの日、ここから始めたんだな」
その声を想像すると、少しニヤニヤした。
明日の予定には、もう、自分がやりたかったことが入っていた。




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