この記事の要約
- 衝突の翌日、街は静かな空気に包まれていた。
- いかりは怖さを認めながらも、「それでも進みたい」と自分へ語りかけた。
- 飛び台へは向かわず、かなしが座るベンチへ腰を下ろした。
- まるも加わり、三人は答えを急がず静かな時間を過ごした。
- 街には「飛ぶ前の時間」を受け入れる空気が生まれ始めていた。
🧭 判断ログ
判断:怖さを認めたうえで、それでも進みたい気持ちを持ち続けることを選んだ。
場面:飛び台の前で立ち止まり、その後ベンチで静かに過ごした場面。
やり方:飛び台を見上げて「怖い」「でも、進みたい」と自分自身へ言葉を向け、その後は答えを急がずベンチに座り続けた。
変化:飛ぶことを決める前に、飛ぶ前の時間をそのまま受け入れる空気が街に生まれた。
物語
衝突の翌日。
街は静かだった。
でっさんが飛び台の前へ行くと、人は集まっている。
それでも昨日まで聞こえていた言い合いはなく、誰もが飛び台を見上げたまま黙っていた。
昨日、初めて街には「飛べない理由」が残った。
その言葉は、まだ風の中に残っているようだった。
いかりは一人で飛び台へ向かって歩いていた。
昨日、自分が叫んだ言葉を思い返す。
「飛ばなきゃ始まらない。」
あの気持ちは今も変わらない。
飛びたい。
進みたい。
その思いだけは、本当だった。
でも昨日、
飛べない理由も、本当なのだと知った。
飛び台を見上げる。
高かった。
昨日より高く見えた。
しばらく立ち止まり、
小さく息を吐く。
そして、
誰に向けるでもなく口を開いた。
「……怖い。」
風だけが答える。
長い沈黙が流れる。
そのあと、
もう一度だけ言った。
「でも、進みたい。」
その言葉は、
誰かを励ますためではなかった。
自分自身へ向けた言葉だった。
いかりは飛び台へ向かわなかった。
帰ることもしなかった。
飛び台へ続く途中にある、
古いベンチまで歩く。
そこには、かなしが座っていた。
昨日と同じように、
飛び台を見つめている。
いかりは何も言わず、
少し離れて腰を下ろした。
木の板が小さく鳴る。
しばらく風だけが吹いていた。
飛び台は変わらず高い。
誰も飛ばない。
誰も帰らない。
時間だけが静かに流れていく。
足音が近づく。
まるだった。
何も言わない。
二人の隣へ座る。
少しだけ間を空ける。
三人とも前を向いたまま動かない。
飛び台が見える。
空も見える。
答えは、まだ見えない。
でっさんは少し離れた場所から、そのベンチを見ていた。
昨日まで、この街は
飛ぶことばかり考えていた。
今日は違う。
飛ぶ前の時間を、
誰も急がなくなっていた。
風が三人の前を通り抜ける。
誰も立ち上がらない。
誰も急がない。
それでも、
誰一人として、
飛び台から目をそらさなかった。
※この文章は、あくまで私の主観による文章です。
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