まるが、まだ決まらない

シリーズ7(事業構築ログ)

作者は、まるを描いていた。
最初は、何も着ていない猫だった。
丸くて、素朴で、悪くない。
けれど、少し物足りなく見えた。
次に、筆のようなしっぽをつけた。
カンジョー通帳らしくなった気がした。
でも今度は、絵を描く猫に見えすぎた。
作業着を着せてみた。
自分の足で動く、頼もしいまるになった。
ところが、少し近寄りにくい。
サングラスをかけさせると、急に楽しそうになった。
これはこれで好きだった。
ただ、まるというより、遊びに来た猫に見えた。
作者は描いて、並べて、また描いた。
いいと思った次の日には、違って見えた。
前の方がよかった気もした。
消すには惜しくて、机の上には何人ものまるが残った。
何も着ていないまる。
光を背負ったまる。
作業着のまる。
サングラスのまる。
スーツにメガネのまる。
どのまるも、少しずつ正しい。
だから、一人に決められなかった。
夜になっても、作者は絵を見比べていた。
その中で、スーツにメガネのまるだけが、こちらを見ているように感じた。
優しそうで、少し堅い。
頼れそうで、どこか抜けている。
作者が今、まるに求めているものに、一番近かった。
「今は、お前かな」
そう言ってみた。
正式決定、と書く気にはならなかった。
ほかの絵を捨てる気にもならなかった。
作者は、スーツにメガネのまるを机の中央へ置いた。
そして、その周りに残りのまるを並べた。
まるは、まだ決まっていない。
でも、決まっていない時間も、
まるが生まれていく途中だった。

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