作者は、まるを描いていた。
最初は、何も着ていない猫だった。
丸くて、素朴で、悪くない。
けれど、少し物足りなく見えた。
次に、筆のようなしっぽをつけた。
カンジョー通帳らしくなった気がした。
でも今度は、絵を描く猫に見えすぎた。
作業着を着せてみた。
自分の足で動く、頼もしいまるになった。
ところが、少し近寄りにくい。
サングラスをかけさせると、急に楽しそうになった。
これはこれで好きだった。
ただ、まるというより、遊びに来た猫に見えた。
作者は描いて、並べて、また描いた。
いいと思った次の日には、違って見えた。
前の方がよかった気もした。
消すには惜しくて、机の上には何人ものまるが残った。
何も着ていないまる。
光を背負ったまる。
作業着のまる。
サングラスのまる。
スーツにメガネのまる。
どのまるも、少しずつ正しい。
だから、一人に決められなかった。
夜になっても、作者は絵を見比べていた。
その中で、スーツにメガネのまるだけが、こちらを見ているように感じた。
優しそうで、少し堅い。
頼れそうで、どこか抜けている。
作者が今、まるに求めているものに、一番近かった。
「今は、お前かな」
そう言ってみた。
正式決定、と書く気にはならなかった。
ほかの絵を捨てる気にもならなかった。
作者は、スーツにメガネのまるを机の中央へ置いた。
そして、その周りに残りのまるを並べた。
まるは、まだ決まっていない。
でも、決まっていない時間も、
まるが生まれていく途中だった。






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